SNSは、他人と気軽に情報が共有できたり、コミュニケーションが取れたりする利便性が高いツールです。
その反面、SNSをはじめとするインターネット上では、誹謗中傷が起こりやすいのも事実です。
今回は、なぜSNSをはじめとするインターネット上での誹謗中傷が起こるのかをご紹介します。
もし誹謗中傷に遭ってしまった場合の対策法も含めて解説しているので、気になる方はぜひ最後までご覧ください。
誹謗中傷とは?
誹謗中傷とは、どのようなことを意味しているのでしょうか?
誹謗中傷は、相手の人格を否定して傷つけること、根拠のないデマ情報やフェイクニュースなどで相手の人格や企業などの社会的評価を著しく低下させることです。
誹謗は相手に対する悪口のようなイメージで、中傷は根拠のない内容で相手を責めたり悪く言ったりすることです。
例えば、相手に対して「ブス」「クソ野郎」「足が太い」などの悪口は誹謗となり、「お前の母ちゃんでべそ」「整形女」「パパ活で生計を立てている主婦」など、事実ではないことを言うと中傷となります。
誹謗も中傷も詳しい内容を見ていくと意味は異なっていますが、これらに共通しているのは「相手の名誉を棄損している」ことです。
この場合、法律上の名誉権侵害に該当する可能性があります。
さらに、誹謗中傷と似ているのが批判です。
誹謗中傷は、相手の外見や人格に対する悪口や虚偽発言をすることであれば、批判はその意見とは違ったことを主張するという意味です。
ある人物の行動や発言に対して「このような行動には問題があり、このように変えていくべきだ」などの内容が批判となります。
相手を批判する際に悪意がなく意見を言っているだけでも、相手から誹謗中傷と受け止められる可能性もあり、明確な線引きが難しい点もあります。
誹謗中傷はどこで判断できる?
前述したように、誹謗中傷は明確な線引きができない点もあり、正しい意味や基準を理解しておくと安心です。
誹謗中傷に該当するのは「相手に対して根拠のない悪口や評価、嘘や噂で相手を傷つけること」となります。
では、いくつかの例を挙げていきます。
【例】
・SNSで「隣のA子さんはいつもきれいな服を着ている。スカートも短いので不倫しているって聞いたことがある」(噂をそのままSNSに投稿した場合)
・ネットの掲示板に「Bさんは何度も浮気を繰り返して懲りない最低なクズ人間」(悪口をそのままネットに投稿した場合)
・口コミサイトに「C店は料理に虫やカビも平気で混入していて救急車で運ばれた人も知り合いにたくさんいるからやめたほうがいい」(デマをそのままネットに投稿した場合)
これらの内容は、どれも特定の人物や店を対象に根拠のない噂や悪口、デマを投稿しています。
特定の人や団体などを指していない場合、虚偽がなければ誹謗中傷に当てはまりにくいでしょう。
しかし、根拠のない悪口などで相手を傷つけた場合、誹謗中傷に該当する可能性が高いです。
他にも、誹謗中傷によって名誉棄損罪、侮辱罪などに該当するかどうかも重要なポイントとなってきます。
名誉毀損罪は、誹謗中傷に触れる可能性がある罪です。
名誉毀損罪には、公然と事実をかいつまんで相手の名誉を棄損することとなります。
不特定多数の人に対して、具体的な内容を示して相手の社会評価を貶めるような言動が起こります。
もし、相手の名前を伏せ字にしていたとしても、それが容易に特定できる場合は名誉毀損罪に該当する可能性もあるでしょう。
一方の侮辱罪は、公然と事実を適示せず相手を侮辱する行為です。
もし、SNS上で特定の人物をバカだとすれば事実を適示していないこと、特定の人物を公然で侮辱していることから侮辱罪に該当する可能性もあります。
SNSなどインターネット上で誹謗中傷が起こる理由
ここまで、SNSやインターネット上で書き込まれた内容から誹謗中傷、侮辱罪、名誉棄損などの罪になる可能性などを指摘してきました。
SNSやインターネット上で、このような書き込みをすれば必ずリスクがあるのは理解できますが、なぜリスクを負ってでもネット上で誹謗中傷するのでしょうか?
手軽さ
SNSなどインターネット上で誹謗中傷が起こる理由として、その手軽さが挙げられます。
誰もが登録して利用できるSNSは、2012年~2018年までの間で約4倍にまで増加しているデータがあります。
利用者の年齢層も広がり、10代半ば~後半までの若者も多く登録しています。
気軽に登録できてリアルタイムで情報が共有できるため、コミュニケーションツールや情報収集ツールとしても活用されています。
登録に対するハードルも低く、気軽に使えるコンテンツであることも手軽だと感じる要因でしょう。
しかし、この手軽なSNSなどで頻繁にネット炎上が起こっていることも事実です。
ネット炎上は、特定のユーザーや投稿内容について多くのユーザーが批判や非難をすることで、その対象は個人や企業などを問わず炎上します。
袋叩きに近い印象もあり、相手に加担していくことで大きな話題になることも多いです。
このように登録のハードルが低く、誰もが気軽に登録できたり、使用できたりする手軽さがインターネット上の環境を悪化させてしまう可能性があります。
他にも、知識やこれらのリスク管理についても知識が乏しいため、誹謗中傷が起こりやすくなっています。
匿名性
インターネット上では、匿名性が保障されている環境であり、発言や発信した人が誰なのか特定できないケースもあります。
Facebookは実名登録を条件としていますが、X(旧Twitter)やTikTok、Instagramなどでは匿名で書き込みが可能です。
許可して相手しかやりとりできない設定も可能なので、自分の知らないところで悪口を言われている可能性もあります。
これは、匿名性という点から個人情報が特定されにくく、これを理由に「バレないだろう」という心理が働くからです。
その結果、様々な場面で誹謗中傷が起こりやすく、相手もバレないだろうという意識で過激な内容を投稿しがちになります。
集団心理
SNSやインターネットでは、ある人の行動や発言に対して共感する方もいますが、なかには批判する人もいます。
人間全て同じ考えではないので、違う考えであっても特に問題はありません。
しかし、投稿者と同じ考えかどうかではなく、「誰かを貶めるための起爆剤」を投下し、炎上させることで快楽を得ている人もいるのです。
このような状況になった時、「赤信号みんなで渡れば怖くない」という他人もしているから大丈夫という同調や集団心理が働いて誹謗中傷が起こりやすくなってしまいます。
誰かに便乗しただけだからと安心して、誹謗中傷を楽しんでしまう人もいます。
このような集団心理により、誹謗中傷も起こりやすくなるのです。
正義感
他人の投稿に対して攻撃的な発言をする人の中には、「許せない」「失望した」という感覚を持ち「相手が悪い」「自分は正しい」と考えてしまう人もいます。
このような人は、「自分は正義感でしているから悪くない」「悪いことをしたなら報いを受けなければならない」「他人に迷惑をかけたことを思い知らせてやる」と考え、過剰な正義感を振りかざすことが多いです。
特に日本のSNSは匿名性が高く、悪質な誹謗中傷が多いという意見もあります。
正義感があれば誹謗中傷していいわけではなく、歪んだ正義は相手を傷つける結果になってしまうのです。
この正義感に関しては、過去に日本が受けてきた教育が原点で、ルールやマナーを守ることを叩きこまれてきました。
模範となる意識を育むことは間違っていませんが、過剰になることで正義感が間違った方向に行きやすくなっています。
SNSにはどんな誹謗中傷の特徴がある?
SNSにおいての誹謗中傷は、10年前と比較すると約4倍にもなっていて、日々誹謗中傷に悩む方が法務省の支援事業「違法・有害情報相談センター」に相談をしています。
この相談件数の増加から、誹謗中傷に悩んでいる方は多く、今でも誹謗中傷に悩んでいる方が多いことがわかります。
そこで、気になるのがSNSごとの誹謗中傷の内容や特徴についてです。
ここでは、SNSごとの誹謗中傷の特徴をご紹介します。
X(旧Twitter)
X(旧Twitter)は、文章でのやり取りがメインのツールです。
全角140文字、半角280文字まで入力可能で、それ以上の文字数は入力できません。
年齢・性別に問わず利用者が多く、アクティブユーザー数は約4,500万人です。
LINEと並ぶほどの登録者数で、日本最大級のSNSと認識されています。
利用時間数は10代が最も多くて31.9分が平均となっていて、リアルタイムで交流できるのが特徴です。
そんなX(旧Twitter)では、実生活の友人や知人とつながっている人も多くいますが、実名よりも気軽に投稿できることから、何も考えずに誹謗中傷をする人もいます。
2010年のサービス開始以降、写真や動画などを取り入れて、ビジュアル面にも強いのが特徴です。
若年層の女性ユーザーがメインであり、誰にでもコメントできる機能が便利です。
おしゃれな投稿をする方も多く、自分の顔やメイクなどを施し、楽しい音楽に合わせた投稿も増えています。
Instagramは、メイクやファッション動画なども充実していて、気軽に投稿画像にコメントを残せる機能はメリットに感じるかもしれません。
しかし、ユーザーが感じている気軽さが誹謗中傷を起こりやすくしています。
投稿画像や動画に対して誹謗中傷が起こりやすく、ダイレクトメール機能では個人間でやり取りも可能なため、直接誹謗中傷を受けるケースもあります。
LINE
LINEはただのSNSツールではなく、スマートフォンを持っている方のほとんどが使用しているほど普及しています。
電話・メールなどの機能があり、個人間でのやりとりがメインです。
このようなツールでも誹謗中傷は起こっていて、特に中高生を中心にLINEに関する悩みを抱えていることが多くあります。
知っている相手から誹謗中傷を受けるケースが多く、特定のメンバー同士でのやりとりで起こることから世間的に発覚しにくい点があります。
SNSで誹謗中傷を受けたらどうすべき?
もしSNSで誹謗中傷を受けた場合、どのようにすべきでしょうか?
ミュートやコメント制限をする
SNSでは、特定のユーザーをシャットダウンする設定があります。
自己防衛のためにも、この機能を見直してみましょう。
設定は、プライバシー設定に含まれていることが多く、個人情報の公開を控えたり、許可した相手のみとやりとりできたりします。
ミュート機能は、相手に知られることなく通知や投稿を自分のスマホに表示しないようにするものです。
コメント制限は、自分の投稿に対してコメントできる範囲を制限できるだけでなく、誹謗中傷など不適切なコメントを非表示にできます。
プラットフォームを安心で安全に使用できるように、各SNSの取り組みを確認して利用してみましょう。
運営側に対して削除申請をする
プライバシーに関する内容、虚偽の内容などはそのままにするとSNS上で多くの人に拡散される可能性が高いです。
投稿元を消しても他の人がその内容を保存していると、忘れた頃に虚偽の内容が広がる恐れもあります。
このような内容を見つけたら、早急に投稿の削除申請をするのが良いでしょう。
削除申請をする場合、投稿されたURL、アドレス、画像、動画などを控えてから、サイトの通報やお問い合わせで削除依頼をしてください。
運営側へ削除申請などの方法がわからない場合は、無料の相談窓口などへの相談も可能です。
プロバイダ責任制限法
2022年10月から施行された「改正プロバイダ責任制限法」では、新たな裁判手続きによって情報開示手続きが迅速になりました。
これは、SNSやインターネット上で誹謗中傷を受けた被害者のためにできたものです。
発信者の情報開示請求ができる制度となっていて、手間が簡略化できるだけでなく、手続きも早くなったのが特徴です。
匿名であっても、これによって損害賠償請求が可能となりました。
まとめ
SNSでの風評被害を受けるのは有名人や著名人だけでなく、一般人でも起こり得ることです。
自分は目立った行動をしていないから大丈夫と考えるかもしれませんが、SNSを使用している以上、いつ被害に遭うかわかりません。
SNS使用前にネットリテラシーについて知り、自分でも対策をすると良いでしょう。
また、誹謗中傷に遭った場合は早急に対応すると被害を少なくできます。