インターネットやSNSの普及により、企業や個人に対するネガティブな情報は瞬時に拡散される時代となりました。
その中でよく耳にするのが「誹謗中傷対策」と「風評被害対策」ですが、両者は似ているようで目的や対応方法に違いがあります。
違いを正しく理解せずに対策を行うと、十分な効果が得られない可能性もあるため注意が必要です。
本記事では、誹謗中傷対策と風評被害対策の違いをわかりやすく解説するとともに、それぞれに適した対処法や考え方について紹介します。
自社や自身の状況に応じた適切な対策を選ぶための参考にしてください。

誹謗中傷・風評被害とは?

誹謗中傷と風評被害は、いずれも企業や個人の評価を下げる要因となる点で共通していますが、その性質や発生の仕組みには違いがあります。
適切な対策を講じるためには、それぞれの意味や特徴を正しく理解することが重要です。
ここでは、両者の基本的な定義について解説します。

誹謗中傷の意味

誹謗中傷とは、根拠のない情報や悪意のある発言によって、特定の個人や企業の名誉や信用を傷つける行為を指します。
インターネット上では、SNSや掲示板、口コミサイトなどでの投稿が該当するケースが多く、事実に基づかない内容や誇張された表現が含まれることが特徴です。
場合によっては名誉毀損や侮辱といった法的問題に発展することもあり、迅速な対応が求められます。

風評被害の意味

風評被害とは、事実とは異なる情報や不確かな噂が広まることで、企業や商品、地域などの評価や売上に悪影響が生じることを指します。
誹謗中傷のように明確な悪意があるとは限らず、誤解や不安、憶測などから自然に広がるケースも多い点が特徴です。
例えば、根拠のない安全性への不安が拡散されることで、商品が敬遠されるといった事例が挙げられます。
適切な情報発信と信頼回復の取り組みが重要となります。

誹謗中傷対策と風評被害対策の違い

誹謗中傷対策と風評被害対策は混同されがちですが、目的や対象、アプローチには明確な違いがあります。
それぞれの特性を理解し、状況に応じて適切な対策を選ぶことが、効果的なリスクマネジメントにつながります。
ここでは、誹謗中傷対策と風評被害対策の主な違いを3つの観点から解説します。

目的

誹謗中傷対策の主な目的は、悪意のある投稿や不適切な発言によって傷つけられた名誉や信用を守り、被害の拡大を防ぐことです。
問題となる投稿の削除や発信者の特定など、直接的な対応が中心となります。

一方、風評被害対策は、誤解や不確かな情報の拡散によって低下したイメージを回復し、信頼を再構築することが目的です。
ネガティブな印象を払拭し、ポジティブな評価を積み上げるための中長期的な取り組みが重視されます。

対象

誹謗中傷対策の対象は、特定の個人や企業に対して行われる悪意ある投稿や中傷的な書き込みです。
SNSや掲示板、口コミサイトなどに投稿された具体的なコンテンツが主な対象となります。

これに対し、風評被害対策の対象は、噂や憶測、不安などを背景に広がるネガティブな評価やイメージ全体です。
特定の投稿だけでなく、検索結果や世間の印象など、より広範囲にわたる情報が対象となります。

主な手法

誹謗中傷対策では、投稿の削除依頼や発信者情報開示請求、法的措置など、問題の原因となる情報そのものに直接アプローチする手法が中心です。
また、モニタリングによる早期発見も重要な施策となります。

一方、風評被害対策では、SEO対策による検索結果の改善や、広報活動・コンテンツ発信によるイメージ向上など、間接的に評価を改善する手法が多く用いられます。
ネガティブ情報を抑えるだけでなく、ポジティブな情報を増やすことが重要なポイントです。

誹謗中傷・風評被害が企業に与える影響

誹謗中傷や風評被害は、一時的な評判の悪化に留まらず、企業活動全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
特にインターネット上で情報が拡散されやすい現代では、被害が長期化・広範囲化しやすい点に注意が必要です。
ここでは、企業に与える主な影響について解説します。

売上減少・イメージ低下

ネガティブな情報が広がると、消費者や取引先の信頼が低下し、商品やサービスの利用を避けられるようになります。
その結果、売上の減少につながるだけでなく、「問題のある企業」というイメージが定着してしまう恐れがあります。
一度低下したブランドイメージを回復するには時間とコストがかかるため、早期対応が重要です。

生産性の低下

誹謗中傷や風評被害は、従業員にも大きな心理的影響を与えます。
自社に対するネガティブな評価が広がることで、仕事への誇りやモチベーションが低下し、生産性の低下を招く可能性があります。
また、問い合わせ対応やクレーム処理に追われることで、本来の業務に集中できなくなる点も課題です。

採用活動が難しくなる

企業の評判は、求職者の応募意欲に大きく影響します。
ネガティブな口コミや評価が目立つと、「働きたくない企業」と認識され、優秀な人材の確保が難しくなる恐れがあります。
特に口コミサイトやSNSでの評判は簡単に確認できるため、採用競争力の低下につながりやすい点に注意が必要です。

各ステークホルダーからの信頼失墜

誹謗中傷や風評被害は、顧客だけでなく、取引先や株主、金融機関などのステークホルダーにも影響を与えます。
信頼が損なわれると、取引の縮小や資金調達の難化といった経営リスクにつながる可能性があります。
企業としての信用を維持するためには、日頃から適切な情報発信とリスク管理を徹底することが不可欠です。

誹謗中傷・風評被害に関連する法的制裁

誹謗中傷や風評被害は、単なる評判の問題に留まらず、内容によっては法的責任を問われる可能性があります。
特に悪質な投稿や虚偽情報の拡散は、刑事罰や損害賠償の対象となることもあるため注意が必要です。
ここでは、代表的な法的制裁について解説します。

名誉棄損罪

名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示し、他人の社会的評価を低下させた場合に成立する犯罪です。
3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。
インターネット上で企業や個人の評判を下げる内容を投稿した場合、たとえ内容が事実であっても、公共性や公益性が認められなければ成立する可能性があります。
刑事罰としては、懲役または罰金が科されることがあります。

信用毀損罪

信用毀損罪とは、虚偽の情報を流布するなどして、企業や個人の経済的な信用を損なう行為に対して成立する犯罪です。
名誉棄損罪と同様に、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。
例えば、「この会社は倒産寸前だ」といった事実無根の情報を拡散し、取引や売上に悪影響を与えた場合などが該当します。
誹謗中傷の中でも、特にビジネスに直接的な影響を与えるケースで問題となります。

偽計業務妨害罪

偽計業務妨害罪は、虚偽の情報や不正な手段(偽計)によって、他人の業務を妨害した場合に成立します。
例えば、デマ情報を流して店舗の営業を妨げたり、大量の虚偽クレームを送ったりするなどの行為が該当します。
企業活動に直接的な損害を与えるため、悪質性が高いと判断されやすい犯罪です。
偽計業務妨害罪では3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。

侮辱罪

侮辱罪は、具体的な事実を示さずに、他人を公然と侮辱した場合に成立する犯罪です。
SNSなどでの誹謗中傷コメントや中傷的な表現が該当するケースが多く、近年は厳罰化が進んでいます。
名誉毀損罪との違いは、事実の摘示があるかどうかで判断されますが、いずれにしても軽視できない法的リスクとなります。
侮辱罪は以前まで拘留または科料という刑罰しか規定されておらず、拘留だと1日以上30日未満刑事施設に収監すること、科料は1,000円以上1万円未満の金銭納付が命じられることです。
しかし、厳罰化により法定刑が引き上げられ、1年以下の懲役もしくは禁錮、または30万円以下の罰金、または拘留、または科料となりました。
さらに、公訴時効期間も1年から3年に延長されています。

誹謗中傷・風評被害を未然に防ぐには

誹謗中傷や風評被害は、発生してから対応するよりも、事前に防ぐことができれば被害を大幅に抑えることができます。
そのためには、日常的なリスク管理と組織全体での意識づけが不可欠です。
仕組みとルールを整え、従業員一人ひとりが適切に行動できる環境を構築することが重要です。
ここでは、未然防止のために有効な取り組みを解説します。

モニタリング体制の構築

インターネット上の評判は常に変化しているため、継続的なモニタリングが欠かせません。
SNSや掲示板、口コミサイト、検索結果などを定期的にチェックすることで、ネガティブな情報の兆候を早期に把握できます。
専用ツールや外部サービスを活用することで、効率的かつ網羅的な監視が可能となり、問題が拡大する前に迅速な対応が取れるようになるでしょう。

ガイドラインの策定と周知

従業員による不適切な発言や情報発信は、思わぬ炎上や風評被害の原因となることがあります。
そのため、SNSの利用ルールや情報管理に関するガイドラインを明確に定め、全社員に周知することが重要です。
具体的な禁止事項や対応フローを示すことで、リスクを未然に防ぐとともに、万が一の際にも適切な行動が取れる体制を整えられます。

研修

ガイドラインを整備するだけでなく、従業員の理解を深めるための研修も欠かせません。
誹謗中傷や風評被害のリスク、実際の事例、適切な対応方法などを学ぶ機会を設けることで、現場での判断力を高めることができます。
定期的な研修を実施し、最新のリスクやトレンドに対応できるようにすることで、組織全体のリスク耐性を強化することが可能です。

 

今回は、誹謗中傷対策と風評被害対策の違いなどを紹介してきました。
誹謗中傷と風評被害は性質こそ異なりますが、いずれも企業の信頼や業績に大きな影響を与える重大なリスクです。
適切な違いを理解し、状況に応じた対策を講じることが重要となります。
日頃からモニタリング体制や社内ルールを整備し、未然防止に取り組むとともに、問題発生時には迅速かつ的確に対応することで、被害の最小化とブランド価値の維持につながるでしょう。