SNSの普及により、深刻な問題となっているのが誹謗中傷です。
ネットを介して行われる誹謗中傷はSNSが持つ拡散力によって瞬く間に広がり、長期間炎上し続けた例もあります。
あまりに行き過ぎた誹謗中傷によって刑事事件にまで発展するケースも少なくありません。
しかしそもそも誹謗中傷とはどのようなものなのでしょうか?
今回は誹謗中傷の意味や、その行為によって起こりうること、誹謗中傷をしてしまう原因などについて解説します。

 

誹謗中傷とは?

企業や個人などが特定できるような状態で嘘や嫌がらせ、侮辱的な言葉で相手を傷つける行為を誹謗中傷といいます。
相手がいない場で間接的に行われた場合でも誹謗中傷となります。
近年はインターネット上での誹謗中傷が増加しており、訴訟に発展するケースも珍しくありません。
では、誹謗中傷とは具体的にどのような状況を指すのでしょうか。

誹謗中傷の定義

現在は一つの言葉として使われている「誹謗中傷」ですが、元々は「誹謗」と「中傷」という別々に存在する言葉を組み合わせたものです。
まずはそれぞれの言葉の意味をみてみましょう。

◎誹謗:相手の悪口を言うこと
◎中傷:根拠のない悪口で相手の名誉を傷つけること

この2つが組み合わさり「根拠のない悪口により相手を傷つける・名誉を損なう行為」が誹謗中傷の定義とされています。
つまり、相手の容姿などを貶す悪口は誹謗、嘘をついて事実でないことを言いふらすのは中傷となり、どちらも誹謗中傷行為となり得ます。

誹謗中傷と批判はどう違う?

誹謗中傷について考える際に知っておきたい言葉が「批判」です。
どちらも似たような言葉だと思いがちですが、定義はまったく異なります。
批判の定義は次の通り。

◎批判:相手の言動に対し、根拠を示しながら指摘したり改善を求めたりすること

このように批判とは明確な根拠を基にした行為であり、誹謗中傷とは明確な違いがあります。
とはいえ、こちらは悪意のない純粋な批判をしたつもりでも、相手が誹謗中傷だととらえてしまう場合もあります。
同じ内容でも状況や言葉選びによって判断が分かれるため、その線引きは難しいといえるでしょう。

 

誹謗中傷をするとどんな罪に問われる?

もし誹謗中傷をしてしまった場合、刑事責任を追及されるおそれがあります。
可能性が高い罪状は次の3つです。

◎名誉棄損罪
◎侮辱罪
◎脅迫罪

それぞれどのようなケースに該当するのかみていきましょう。

名誉棄損罪

名誉棄損罪とは、公然と事実を適示して相手の名誉を棄損した場合に成立します。
この「事実」が本当に事実かどうかは問われません。
つまり、不特定の多人数に伝わるような状態で相手の社会的な評価を貶める言動を取ること全般を指します。
名誉棄損となる言葉の一部は次の通り。

◎あの店の厨房はゴキブリが出る
◎あの会社は残業や休日出勤が当たり前のブラック企業だ
◎あの人は犯罪歴がある
◎あの人は整形している

いずれも企業や個人を特定しており、具体性が高いことから、事実の有無にかかわらず名誉棄損が成立する可能性が高いとされます。

侮辱罪

誹謗中傷は名誉棄損ではなく、侮辱罪に問われることもあります。
侮辱罪とは、事実を適示しなくても公然と人を侮辱した場合に問われるものです。
「事実の適示」がないというのは、具体性のない悪口のことです。

◎バカ
◎ゴミ
◎ブス

このような言葉により相手の社会的な評価を下げる、いわゆる誹謗行為が侮辱罪になります。

脅迫罪

行き過ぎた誹謗中傷は脅迫罪に問われるおそれもあります。
脅迫罪は、相手や相手の親族の生命・身体・自由・名誉または財産に対し危害を加える旨を告知して脅迫を行う行為を指します。
該当するのは次のような言葉です。

◎お前や家族を刺してやる
◎住所は突き止めてある
◎家を燃やしてやる

いずれも具体性が高く、現実的であることや、相手が不安や恐怖を抱くことが成立の要件となります。
また、「帰り道には気をつけろ」「子どもの命はないと思え」などの間接的な脅し文句も該当します。

 

インターネットは誹謗中傷が起きやすい?

誹謗中傷による被害は年々増加していき、今は高止まり傾向にあるといわれています。
その要因の一つとして挙げられるのがインターネットです。
インターネットが身近になったことで誹謗中傷が起きやすくなりました。
さらにはスマートフォンの普及により、インターネットは気軽で便利な暇つぶしアイテムとなります。

いつでも投稿できる環境が整っている

SNSは誰とでもすぐにコミュニケーションが取れる利便性の高さが売りです。
共通の趣味を持つコミュニティなども探しやすく、多くの人の居場所をつくり出しているのは事実でしょう。
しかし、その利便性の高さが投稿のハードルを下げているともいえます。
思いついたことをよく考えずに投稿してしまう、他人の投稿に反射的にコメントをしてしまうといった軽はずみな行動が誹謗中傷に発展するケースも少なくありません。

集団心理が働きやすい

SNSで起こりやすいトラブルに「炎上」があります。
炎上するとトレンドに上がるなどして話題になるため、さらに多くの人が知るところとなります。
多くの人が集まると発生するのが意見の二極化です。
どちらも自分たちの意見を正当化しようとする集団心理が働き出してしまい、投稿内容が過激になっていきます。
始めは「みんなが言っているから」くらいだったものが「絶対そうに違いない」となり、やがて「反対意見を言う人は敵」という極論にまで達して、相手を誹謗中傷してしまうのです。

匿名性の高さが油断を招きやすい

SNSの多くは個人が特定できないような、匿名での投稿が可能です。
自分であって自分ではない自由さが積極的なコミュニケーションをもたらすこともあるでしょう。
しかしその積極性が誹謗中傷につながりやすいともいえます。
自分はその他大勢の一人だからバレないだろう、特定されることはないだろうと気持ちが大きくなり、リアルで顔を合わせていたら絶対にしない言動もできてしまうのがSNSです。
最初はちょっとした辛口コメントのつもりが次第にエスカレートしていき、誹謗中傷に発展するケースもあります。

 

どうして誹謗中傷をしてしまう?

人はどうして誹謗中傷をしてしまうのか、その多くは自分勝手な理由です。

ストレス発散

誹謗中傷をする理由として挙げられるのは相手への嫉妬からくる攻撃や、マウントによるストレス発散です。
相手が傷つく姿を想像して優越感に浸り、スッキリしたいだけなので無差別に攻撃することも多いです。
意図的に炎上させようと、あえて攻撃的な言葉を使う人もいます。

自分が正しいという思い込み

自分の知識や価値観が絶対的に正しいと思い込み、相手の間違いを指摘してあげているという「誤った正義感」から誹謗中傷を行う人もいます。
こういった人はプライドが高く、他人の意見や考えを尊重したり、批判を受け入れたりすることができないため、やりとりがヒートアップしがちです。
自分こそが正しいと思い込んでいるため、誹謗中傷をしている自覚がない場合も。

誹謗中傷は事実の有無にかかわらず、罪が成立します。
「本当のことを言っているだけ」「言われるようなことをする方が悪い」といった考えは通用しません。
軽い気持ちで発した言葉が大きな影響を及ぼすこともあるということをしっかり理解しておく必要があるでしょう。