レピュテーションリスクという言葉を知っていますか?
これは、企業に対しての悪評やネガティブな意見、評判によって企業の評価を下げることです。
レピュテーションリスクは、放置しておけばそのうち忘れてしまうだろうと考えていると、より悪化して大きなダメージを受ける恐れがあります。
そのため、できるだけ正しく、早急な対応が必要になるのです。
この記事では、レピュテーションリスクがどのようなものか、レピュテーションの種類や実例などを含めてご紹介します。
レピュテーションリスクとは何か
レピュテーションリスクとは、どのようなことを意味する言葉でしょうか?
レピュテーションは英語で「Reputation」で、評判、評価、信用という意味を持ちます。
さらに「Risk」という言葉が付いたことで、企業の評価・評判の低下を意味します。
これらの意味を踏まえると、レピュテーションリスクにはネガティブな評判や評価が広がって企業にマイナスの影響を与える危険を示す言葉ということです。
評判リスク、風評リスクといった言い方もされているため、こちらの言葉の方が理解しやすいと考えるかもしれません。
このレピュテーションリスクは、予期せぬタイミングで起こることがほとんどです。
消費者からの信用や信頼を失うだけでなく、顧客維持、顧客満足度、収益の創出など事業に関するあらゆる分野に大きな影響を与えるものです。
消費者だけでなく、ビジネスパートナーからの信頼も失われてしまうため、結果的に契約の破棄や株価の暴落などにまでダメージが伝わることも多いでしょう。
企業が評価や評判を落とすことは、単なる一時的なものではなく、中長期的なビジネス困難を引き起こす可能性も秘めています。
このような事態になった場合、元のように回復するまでに多くの時間と労力、資金などが必要となり、経営そのものが危うくなる可能性もあります。
認知されているレピュテーションリスク
レピュテーションリスクには、どのようなものが認知されているのでしょうか?
・企業やブランドイメージなどへのダメージ
・規制、法制度などの変更
・競争激化
・景気回復の遅れや減速
・優秀な人材確保や維持などの失敗
・事業の中断
・技術革新の失敗
・顧客ニーズなどへの対応の失敗
・ハッキング、ウイルスなどコンピューター犯罪
・第三者への賠償責任
・物的損害
レピュテーションリスクでは、このような内容が起こる可能性があります。
商品やサービスの価値、質が良い企業という信頼を失ったり、画期的な新製品やサービスを生み出す期待や信頼を失ったりするでしょう。
また、社内の問題が起こった場合は企業理念やビジョンをクリアできない企業、収益性や将来性のない企業と印象付ける可能性もあります。
これらのことから、知名度が高い企業や規模が大きな企業はリスクに対して十分な対策が必要です。
このようなリスク内容は、日常的にニュースなどで聞く言葉も多く、特別な感じを受けないかもしれません。
また、リスクが起こる原因にはこのような現象が起こるかもしれないし、起こらないかもしれないという曖昧さも含まれるだけでなく、正しい情報不足なども影響します。
今では、情報の発達によってSNSやサイトの口コミを通して、個人でも簡単に情報を発信できるようになりました。
この利便性は、企業にとってプラスになる面もあればマイナスになる面もあります。
特にネガティブな内容に関してはポジティブな内容に比べて拡散スピードが速く、広がってしまった情報はインターネット上から簡単に消すことができません。
それは、拡散した内容が本当であっても嘘であっても、デジタルタトゥーのような存在になってしまえばどのような形であっても残ってしまいます。
レピュテーションリスクが表面化してしまえば、多くの顧客や取引先が離れ、株価の暴落が起こり、資金調達が困難になるケースも少なくありません。
経営が立ち行かなくなれば、商品やサービスの提供が難しくなり、企業の存続も困難になります。
1つの内容から1つのリスクが起こるのではなく、レピュテーションリスクは連鎖していくということを知っておき、適切な対策が必要となるでしょう。
レピュテーションリスクは何が理由で起こる?
なぜ、レピュテーションリスクは起こってしまうのでしょうか?
レピュテーションリスクが起こる原因は、以下のとおりです。
内部告発
レピュテーションリスクは、内部告発からも起こります。
例えば、上司からのセクハラ、パワハラなどのハラスメント、長時間労働、横領、不正、損失隠しなど、企業の社会的信用を失う内容が内部告発で明らかになることがあります。
これは、従業員が外部に設置されている監督機関、また報道機関に告発して発覚することが多いです。
近年、SNSへの投稿が拡散し、注目されるケースもあります。
従業員の不祥事
従業員の起こした不祥事がきっかけで、レピュテーションリスクが起こる場合もあります。
この従業員が正社員でもアルバイトでも、企業としての責任が問われるケースがほとんどです。
この従業員の行動により、取引先からの取引停止、消費者離れ、企業イメージの低下が起こるだけでなく、余韻が残る事態に発展するケースもあります。
品質の低下
レピュテーションリスクは、製品やサービスの品質が低下したことでも起こります。
近年、SNSの浸透により消費者が受けたサービスや購入した製品の質が悪かった場合、瞬時にその内容が悪評として広がっていきます。
さらに、消費者がその時の感想などを付け加えることで過去の事例が出たり、共感などによってさらに拡散されたりするでしょう。
品質の低下は、技術不足やミスで起こることが多くなりますが、これらの原因の裏には長時間労働や職場の風土などが原因で起こっている可能性もあります。
風評被害
レピュテーションリスクは、企業側が何も問題を起こしていないのに被害に遭う可能性もあります。
それが風評被害です。
この風評被害はSNSなどを中心に起こることが多く、個人の自由な発信が根拠のないものであっても広がってしまうのが原因です。
この内容は、事実かどうかを判断する前に拡散されてしまうため、知らないところで被害を受けてしまいます。
例えば、SNSでA社へのクレームや品質などの悪評を記載した人がいるとします。
そのA社は北海道にある企業ですが、勘違いした人が大阪にある同じ社名の別会社A社の評価を下げた結果、大阪のA社が風評被害を受けるということです。
もちろん、同じ社名でも関係性がないため、批判されることはないのですが、このような根拠のない被害を受けるのは珍しいことではないでしょう。
憶測
レピュテーションリスクは、憶測で起こる可能性もあります。
それは、同業他社の業績悪化が原因となっているためです。
仕組みは、自社の経営そのものは全く問題なく、経営でも業績悪化の兆しは見えていませんが、同じ業種の他社が業績悪化となったことで、同じ業種全てが危険であると思われてしまうからです。
このような憶測から取引企業に確認されたり、評価を落とされたりする可能性もあります。
さらに、ネガティブな憶測が拡散されて浸透した結果、本当に経営が行き詰ってしまうケースもあるでしょう。
レピュテーションリスクが及ぼす影響は?
レピュテーションリスクは、急激な変化によって企業の先行きさえも変えてしまう恐れがあります。
このようなレピュテーションリスクは企業に大きな影響を与えますが、どのような影響が出るのでしょうか?
人手不足になる可能性
レピュテーションリスクによって長期的に回復できなかった場合、人手不足によって業績悪化を招く可能性が高いです。
新たに就職、転職を検討している場合、インターネットなどを駆使して多くの企業情報を入手します。
そこで、企業の悪評や問題を目にした場合、事実かどうかに関わらず、このような問題が起こった企業に就職しようとは思わなくなるでしょう。
他にも、レピュテーションリスクの内容によっては既存の社員が退職していくリスクも高くなり、ますます人手不足の状態になっていきます。
このような状態になれば、優秀な社員は退職していき、新入社員も入ってこない状況から慢性的な人手不足になる可能性が高いでしょう。
売上げの低下や株価暴落の可能性
レピュテーションリスクは、企業の売上げを低下させるだけでなく、株価暴落を引き起こす可能性もあります。
レピュテーションリスクが起こったことで一気に株価が下がり、そのまま信頼回復できるまで低迷期間が続きます。
このような期間が長引くと、顧客や取引先が離れていき、売上げ低迷や株価下落の恐れもあるでしょう。
これらの低下の長期化は商品やサービスの提供にも影響を与え、企業存続の危機に陥る可能性も考えられます。
信頼を戻すまでの時間やコストがかかる可能性
企業は、一度信頼を失ってしまうと取り戻すまでに大きな時間やコストがかかります。
企業の経営体制から見直し、継続した企業努力が欠かせないでしょう。
特にレピュテーションリスクによって信頼を失った場合は、信頼を戻すために企業価値を見直し、立て直すまでの間は多くの収益も見込めません。
業務停止命令や免許停止などの処分を受けた場合は、企業としての価値を失うだけでなく、行政手続きなどによる損失も大きくなります。
レピュテーションリスクを回避するには?
レピュテーションリスクは、企業にとってプラスになることはなく、大きな損失になるのは確実です。
どうすれば、レピュテーションリスクを回避できるのでしょうか?
社員教育の徹底
レピュテーションリスクが起こる原因として、社員の意識の低さが関係しています。
社員がリスクに対しての意識がなかった結果、不祥事が起こった事例もあります。
他にも、何がコンプライアンス違反になるかを理解していないケースもあり、これらを回避するには社員教育を徹底することが重要でしょう。
社員には不祥事が起こった場合、企業がどうなるのかを理解させ、不正によるリスクの憶測などを理解してもらいます。
不正は上司が見ていないという機会、仕事ができると思われたいという動機、売上げ向上や損失を出さないという正当化の3つが揃った時に不正のトライアングルが成立します。
これを基に社員教育の機会や徹底を行いましょう。
社内の体制強化
社内では、細かなチェック体制を整備して強化する必要があります。
チェック体制の強化により、経理の入出金ミスの抑制、不良品確認などが防げるでしょう。
システムの導入や定期的な担当者の交代をおこなうと、より風通しのよい環境になります。
違反者に対しての制裁なども社内で公表すると抑止力になります。
正しい情報の発信
企業は、顧客や消費者などからどのように評価されているかを定期的に確認し、その中に根拠のない噂や悪評を見つけた場合は正しい情報の発信をおこなうことが大切です。
間違ったことだからと放置した結果、その評価が世間のイメージとして定着する可能性もあります。
積極的に正しい情報を発信し続けることで、世間の評価が変わっていくだけでなく、新たな顧客獲得も期待できます。
この発信によって、悪評を流している人へ疑いの目が行き、新たなレピュテーションリスクも起こりにくくなるでしょう。
ネガティブな評価の回復
外部からの要因で起こったレピュテーションリスクの場合、ネガティブな評価の回復を早急に行うことが重要です。
レピュテーションリスクが起こった原因、SNSの内容、書き込まれたサイトなどを特定し、内容を削除するように求めます。
内容によっては書き込みした相手の氏名、住所などの開示請求をし、直接交渉して削除を依頼することも可能です。
このようなネガティブな評価や評判に対して起こった風評被害は、自社だけで解決するのではなく、警察や弁護士への相談なども必要です。
専門的な機関への相談により、スムーズな解決ができます。
まとめ
レピュテーションリスクは、知らないところで起こっている可能性もあり、未然に防げないケースもあるでしょう。
企業悪評の内容が嘘でも本当でもリスクを背負う必要があり、事前に起こる可能性を視野に入れて考えておく必要があります。
何が起こるかわからない未来に備えて、レピュテーションリスクの対策法を学んでおくと安心です。